2026年9月01日

「最近、食事中によくむせるようになった」
「水やお茶を飲むと咳が出る」
「以前より食事に時間がかかる」
「食べられるものが少なくなってきた」
高齢のご家族や介護の現場では、このような変化に気づくことがあります。
もしかすると、それは嚥下機能(飲み込む力)の低下のサインかもしれません。
食べ物や飲み物、唾液などが、本来通る「食道」ではなく「気管」に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といいます。
高齢者では、加齢や病気によって飲み込む力が低下し、誤嚥が起こりやすくなります。誤嚥によって口の中の細菌などが肺に入り、誤嚥性肺炎につながることもあります。(厚生労働省)
では、誤嚥を防ぐためには何をすればよいのでしょうか。
大切なのは、「食べ物を柔らかくする」だけではありません。
食事の姿勢、食べる量やスピード、お口の状態、口腔ケア、嚥下機能、栄養状態、全身状態などを総合的に考えることが重要です。
今回は、高齢者の誤嚥を防ぎ、誤嚥性肺炎を予防するために、家庭でも取り組みやすい10の対策をご紹介します。
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そもそも「誤嚥」とは?
食べ物や飲み物を飲み込むとき、通常は口から喉を通り、食道へ運ばれます。
その際、食べ物が気管へ入らないように、喉の周囲の筋肉などが複雑に働きます。
この「飲み込む」という一連の動きを嚥下(えんげ)といいます。
加齢や脳卒中、認知症、パーキンソン病などの神経疾患、筋力低下などによって嚥下機能が低下すると、食べ物や水分をうまく送り込めなくなることがあります。
そして、本来は食道へ向かうはずのものが気管へ入ってしまうのが誤嚥です。
高齢者では咳反射が弱くなり、誤嚥しても強くむせない「不顕性誤嚥」が起こることもあります。(厚生労働省)
そのため、
「むせていないから大丈夫」
とは限りません。
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高齢者に多い「誤嚥性肺炎」とは?
誤嚥性肺炎は、誤嚥などをきっかけに、口の中の細菌などが気管や肺に入り、肺炎を起こすものです。
特に高齢者では、嚥下機能や咳をする力が低下していることがあり、注意が必要です。(厚生労働省)
また、誤嚥性肺炎の予防を考えるときには、「誤嚥を減らすこと」だけでなく、口腔内を清潔に保つことも重要です。
つまり、
誤嚥を減らす
+
誤嚥しても肺炎につながりにくいお口をつくる
という両方の視点が大切なのです。
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高齢者の誤嚥を防ぐ10の対策
① 食事をするときの姿勢を整える
誤嚥対策の基本の一つが、食事姿勢です。
食事をするときには、できるだけ身体を安定させましょう。
椅子に座る場合は、
深く腰掛ける
足を床につける
身体が左右に傾かないようにする
背中を適度に起こす
顎を軽く引く
ことを意識します。
車いすの場合も、身体が傾いていないか確認しましょう。
ベッド上で食事をする方は、身体の状態に合わせて上半身を起こし、必要に応じてクッションなどを使用します。
ただし、適切な姿勢は一人ひとり異なります。
脳卒中の後遺症や身体の麻痺、首や背中の状態などによっては、個別の調整が必要です。
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② 一口の量を少なくする
一度にたくさん口へ入れると、食べ物を口の中でまとめたり、飲み込んだりすることが難しくなる場合があります。
特に食事介助では、
「たくさん食べてもらおう」
と一口量が大きくなりがちです。
一口量を少し小さくして、
「一口食べる → 飲み込む → 次の一口」
というリズムを意識しましょう。
まだ口の中に食べ物が残っている状態で、次の一口を入れないことも大切です。
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③ 食べるスピードをゆっくりにする
食事を急いで食べると、飲み込みが追いつかないことがあります。
介助する場合も、次々と食べ物を口に入れるのではなく、その人が飲み込んだことを確認してから次の一口へ進みましょう。
食事は「早く終わらせるもの」ではありません。
その人にとって無理のないペースで食べられることが大切です。
特に、
食事に時間がかかる
飲み込みに時間がかかる
食後に疲れてしまう
という方は、食事量だけでなく、食事にかかる時間や疲労も確認してみましょう。
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④ 水分の誤嚥に注意する
「食事は大丈夫なのに、水やお茶でむせる」
という方は少なくありません。
水分はサラサラしていて流れるスピードが速いため、嚥下機能が低下している方では飲み込みのタイミングが合わず、むせることがあります。
ただし、
「水でむせるから、水分を飲ませない」
というのは危険です。
高齢者では脱水にも注意が必要です。
必要に応じて、とろみをつけるなど、その人の嚥下機能に合わせた水分摂取方法を検討します。
ただし、とろみは「つければつけるほど安全」というものではありません。
とろみの濃さや飲み物の種類によって、飲み込みやすさは変わります。
自己判断だけで調整せず、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などの専門職に相談することをおすすめします。
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⑤ 食事形態をその人に合わせる
「誤嚥が心配だから、全部柔らかい食事にする」
という方法が必ずしも正解とは限りません。
食べる力には個人差があります。
例えば、
噛む力
舌の動き
唾液の量
飲み込む力
歯の状態
入れ歯の状態
などによって、適した食事形態は変わります。
また、「刻み食なら安全」とも限りません。
細かく刻んだ食材が口の中でばらばらになり、かえってまとめにくくなることもあります。
大切なのは、
「柔らかいかどうか」ではなく、「その人が安全に処理して飲み込めるか」
という視点です。
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⑥ 食事前にお口と身体を準備する
安全な食事は、食べ物を口に入れる前から始まっています。
食事前には、
姿勢を整える
入れ歯を確認する
お口の中を確認する
意識を食事に向ける
必要に応じて口腔体操を行う
などの準備を行いましょう。
厚生労働省の介護予防マニュアルでも、口腔機能の維持・向上は介護予防の重要な取り組みとして位置づけられています。(厚生労働省)
唇や舌を動かしたり、頬を動かしたりする簡単な運動を取り入れる方法もあります。
ただし、嚥下障害の程度によって適切な訓練は異なります。
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⑦ お口の中をきれいにする
誤嚥性肺炎を予防するうえで、非常に大切なのが口腔ケアです。
お口の中には多くの細菌が存在しています。
歯や歯ぐきだけでなく、
舌
入れ歯
頬の内側
歯と歯の間
などにも汚れがたまります。
口腔内が不衛生な状態で誤嚥が起こると、細菌などが肺へ入り込む可能性があります。
そのため、
「誤嚥しないようにする」ことと同時に、「お口を清潔にする」こと
が大切です。
日本歯科医師会も、高齢者の誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが重要であると紹介しています。
毎日の歯みがきに加えて、舌の清掃や入れ歯の清掃など、その人に合った口腔ケアを行いましょう。
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⑧ 入れ歯・歯の状態を確認する
「最近、食べる量が減った」
というとき、嚥下機能だけが原因とは限りません。
入れ歯が合っていない。
歯が痛い。
歯が抜けた。
噛みにくい。
このような問題があると、食べ物を十分に噛めず、飲み込みやすい状態にまとめることが難しくなります。
また、入れ歯を外したまま食事をしている方もいます。
「入れ歯が痛いから使っていない」
という場合は、歯科医院で調整できることがあります。
食べる機能を考えるときには、歯・入れ歯・舌・喉を別々に考えないことが大切です。
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⑨ 食後の様子まで確認する
誤嚥は食事中だけに起こるとは限りません。
食事のあとに、
咳が続く
痰が増える
声が濡れたようになる
呼吸が苦しそう
食後に疲れ切っている
などの変化がないか確認しましょう。
また、食後すぐに横になるのではなく、必要に応じて上体を起こして過ごすなど、その人に合った姿勢を考えます。
食事中だけでなく、食事前・食事中・食事後を一つの流れとして観察することが大切です。
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⑩ 「むせる」「食べにくい」を放置しない
最後に、一番大切な対策です。
それは、
「最近、食べ方が変わった」と感じたら、そのままにしないこと。
です。
例えば、
最近よくむせる
水分で咳が出る
食事に時間がかかる
食べ物を口にためる
食べこぼしが増えた
声が濡れたようになる
食事量が減った
体重が減ってきた
肺炎を繰り返す
という変化がある場合は、嚥下機能を確認することをおすすめします。
「年齢だから仕方がない」
と考えず、一度専門家に相談してみましょう。
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「むせない=安全」ではありません
誤嚥対策で注意したいのが、不顕性誤嚥です。
通常、食べ物が気管に入ると、咳やむせによって外へ出そうとします。
しかし、高齢者では咳反射が低下していることがあり、誤嚥しても目立ったむせが起こらない場合があります。(厚生労働省)
そのため、
「最近むせなくなったから、嚥下機能が良くなった」
とは限りません。
以前はむせていたのに、最近まったくむせなくなった。
その一方で、肺炎を繰り返す、痰が増えた、食後に声が変わる。
このような場合には、一度専門的な評価を受けることが重要です。
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誤嚥が心配なら「嚥下機能」を評価しましょう
誤嚥の原因は、一人ひとり異なります。
そのため、
「とろみをつける」
「柔らかいものにする」
「食事をやめる」
といった方法を自己判断で続けるのではなく、必要に応じて専門家による評価を受けることが大切です。
歯科医院では、
歯や歯ぐきの状態
入れ歯
舌の動き
口腔機能
咀嚼
嚥下
食事中の様子
などを確認します。
さらに詳しい評価が必要な場合には、嚥下内視鏡検査(VE)を行うこともあります。
VEでは、鼻から細い内視鏡を入れ、実際に食べ物や飲み物を飲み込むときの喉の状態を観察します。
「なぜむせるのか」
「どの食事形態なら食べやすいのか」
「姿勢を変えるとどうなるのか」
などを確認し、その人に合った食べ方を考える材料にします。
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誤嚥対策は「食べないこと」ではありません
誤嚥が心配になると、
「もう口から食べないほうがいいのでは?」
と考えることがあります。
もちろん、生命の安全を守ることは最優先です。
しかし、誤嚥対策の目的は、単純に「食べることをやめる」ことではありません。
歯を治す。
入れ歯を調整する。
姿勢を整える。
一口量を変える。
食事形態を調整する。
水分の摂り方を工夫する。
口腔ケアを行う。
嚥下訓練を行う。
栄養状態を改善する。
こうしたさまざまな取り組みを組み合わせることで、「どうしたら安全に食べられるか」を考えることができます。
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誤嚥対策には多職種の連携が大切
摂食嚥下の問題は、歯科だけで解決するものではありません。
医師、歯科医師、歯科衛生士、看護師、言語聴覚士、管理栄養士、リハビリスタッフ、介護職、ケアマネジャーなど、多職種の連携が重要です。
厚生労働省も、誤嚥性肺炎の予防ではリスク評価、日常的な予防、変化の把握、医療との連携などを含めた総合的なケアマネジメントの重要性を示しています。(厚生労働省)
そして、その中心にいるのは患者さん本人です。
「何を食べたいのか」
「どこまで食べたいのか」
「家族と食卓を囲みたいのか」
その思いを聞きながら、安全性とのバランスを考えていくことが大切です。
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今日からできる「誤嚥対策チェックリスト」
最後に、日常生活で確認してみましょう。
食事前
□ 体調は悪くないか
□ 眠気が強くないか
□ 姿勢は安定しているか
□ 入れ歯は合っているか
□ お口の中に食べ物が残っていないか
食事中
□ 一口量が多すぎないか
□ 食べるスピードが速すぎないか
□ 飲み込んでから次の一口にしているか
□ 水分でむせていないか
□ 食べ物を口にためていないか
□ 声が濡れたようになっていないか
食事後
□ 咳が続いていないか
□ 痰が増えていないか
□ 声が変化していないか
□ 苦しそうではないか
□ 食事量が減っていないか
一つでも気になる項目があれば、毎日の様子を記録してみるのもおすすめです。
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「食べる」を守ることは、その人の生活を守ること
食べることは、栄養を摂るためだけのものではありません。
好きなものを食べる。
家族と食卓を囲む。
季節を感じる。
「おいしい」と笑う。
食事には、その人らしい生活が詰まっています。
だからこそ、誤嚥対策も、
「危ないから食べさせない」
だけではなく、
「どうしたら、できるだけ安全に食べ続けられるか」
という視点で考えていきたいと思っています。
たのしみ歯科では、むし歯や歯周病、入れ歯の治療だけでなく、摂食嚥下機能の評価、口腔ケア、食支援、嚥下内視鏡検査(VE)にも取り組んでいます。
「最近むせるようになった」
「水分でむせる」
「食事に時間がかかるようになった」
「食べられるものが減ってきた」
「誤嚥性肺炎を繰り返している」
そんなときは、一度ご相談ください。
必要に応じて医科やリハビリテーション、栄養などの専門職とも連携しながら、その方に合った「食べる」を一緒に考えていきます。
誤嚥を完全になくすことだけがゴールではありません。
その人らしく、できるだけ安全に、できるだけ長く、
「ごはんがたのしみ」
と思える毎日を守ること。
それが、たのしみ歯科が大切にしている「食べるを支える」という考え方です。
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「ごはんがたのしみ」な毎日を、あなたと。
たのしみ歯科では、ご自宅・施設への訪問歯科診療に対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。
「食べるを支える仲間、募集中。」
歯科医師・歯科衛生士の採用も行っています。
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訪問診療 080-4470-6052
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