2026年10月20日

「たべたい」と「たべさせたい」の想いをつなぐ、その先の笑顔
たとえ病気があっても、寝たきりでも。生活の中に「たのしみ」をつくる、みんなで支える食支援
「食べたい」という想い、「食べさせてあげたい」という願い
「もう一度、口から食べたい」
「大好きだったものを、もう一度食べさせてあげたい」
私たちが日々の診療の中で出会うのは、そんな患者さんやご家族の想いです。
年齢を重ねたり、病気を患ったり、入院をきっかけに体力が落ちたりすると、これまで当たり前だった食事が難しくなることがあります。飲み込む力が弱くなる、食事中にむせる、食べる量が減る、食事に時間がかかる。そうした変化によって、食べることそのものが大きな課題になる場合があります。
医療の現場では、誤嚥や窒息、誤嚥性肺炎などのリスクを考え、安全性を優先しなければならない場面があります。ご本人の状態によっては、食事を控えたり、食べる形態を変更したりする必要もあります。
しかし、食べることは、単に栄養を摂取するためだけの行為ではありません。
好きなものを味わうこと。家族と同じ食卓を囲むこと。季節の食べ物を楽しむこと。誰かと「おいしいね」と笑い合うこと。
食べることには、その人が生きてきた時間や思い出、人とのつながりが詰まっています。
だからこそ、私たちは「食べられるか、食べられないか」という二択だけで考えるのではなく、「どうすれば、その人らしい食べる楽しみを支えられるだろう」と考えたいのです。
「たべたい」と「たべさせたい」の間にあるもの
食支援の現場には、二つの大切な想いがあります。
一つは、ご本人の「たべたい」という想い。
もう一つは、ご家族や周囲の人の「たべさせたい」という想いです。
ご本人にとって、食べることは生きる喜びであり、自分らしさを感じる時間かもしれません。一方、ご家族にとって、食べてもらうことは、元気になってほしいという願いであり、これまで一緒に過ごしてきた日常を取り戻したいという気持ちの表れかもしれません。
「お父さんの好きだったうなぎを、もう一度食べさせてあげたい」
「母が大好きだったプリンを、一口でも食べてほしい」
そんな言葉の奥には、これまでの思い出や、伝えきれなかった感謝、そして大切な人を想う気持ちがあります。
ただし、その二つの想いが、いつも同じ方向を向いているとは限りません。
ご本人は食べたいと思っていても、身体が思うように動かない。ご家族は食べさせてあげたいと願っていても、誤嚥が心配で一歩を踏み出せない。反対に、ご本人は食べることに疲れているのに、ご家族は何とか食べてほしいと願うこともあります。
どちらかが間違っているわけではありません。
それぞれが、その人を大切に思うからこそ生まれる気持ちです。
大切なのは、どちらかの想いを押し通すことではなく、お互いの気持ちを知り、その間をつないでいくことです。
ご本人は何を望んでいるのか。ご家族は何を心配しているのか。医療や介護の専門職にできることは何か。
対話を重ねながら、一緒に考えていくこと。それが、私たちの考える食支援の出発点です。
食べるために、まず「その人」を知る
食べることを支えようとするとき、私たちは、つい口の中や飲み込む機能に注目しがちです。
もちろん、歯や入れ歯の状態、舌の動き、唾液の量、噛む力、飲み込む力を評価することは欠かせません。
しかし、食べることは、口の中だけで完結するものではありません。
食事を楽しむためには、身体を起こして座る力が必要です。食事に集中できる環境も大切です。食べたいと思える気持ちや、食事を準備してくれる人の存在も欠かせません。
例えば、入れ歯が合わずに食べられなくなっている方には、入れ歯の調整が必要かもしれません。食事中に疲れてしまう方には、姿勢や食事時間、介助方法の見直しが役立つことがあります。
食欲が落ちている方には、栄養状態や体調を確認するとともに、食事の香りや盛り付け、好きな食べ物など、食べたいと思えるきっかけを探すことも大切です。
認知症のある方が食事を拒む場合も、単に「食べたくない」と決めつけるのではなく、食べ物が認識しにくい、食事の進め方が分からない、周囲の音が気になる、口の中が痛いといった背景がないかを考えます。
必要なのは、目の前の症状だけを見るのではなく、その人の生活全体を知ることです。
どんな仕事をしてきたのか。何が好きだったのか。誰と食卓を囲んできたのか。どんな暮らしを続けたいと思っているのか。
その人を知ることで、私たちが提案できる支援は変わってきます。
食べる機能を評価することと、その人の人生を理解すること。その両方があってこそ、本当にその人に合った食支援につながるのだと思います。
たとえ寝たきりでも、生活の中に「たのしみ」はつくれる
病気があっても、寝たきりであっても、生活の中に楽しみを見つけることはできます。
もちろん、すべての方が必ず口から食べられるようになるわけではありません。病状や身体の状態によっては、経口摂取が難しい場合もあります。だからこそ、医学的な評価を行い、安全性やご本人の希望を踏まえて、一人ひとりに合った方法を考える必要があります。
そのうえで、私たちは「今できることは何だろう」と考え続けたいと思っています。
例えば、飲み込みの機能や全身状態を評価し、適切な条件のもとで少量の食事を楽しめる可能性を探ること。口腔ケアを行い、口の中を清潔に保ち、味や香りを感じやすい環境を整えること。合わなくなった入れ歯を調整し、噛む機能の改善を目指すこと。
食事そのものが難しい時期にも、好きだった料理の香りを感じたり、家族が食事をする様子を一緒に楽しんだりすることが、その人にとって大切な時間になるかもしれません。ただし、食べ物や飲み物を口に入れることは、機能や病状によって危険を伴う場合があるため、必ず状態に応じて判断する必要があります。
大切なのは、できないことだけを数えるのではなく、今の状態でできることを探すことです。
以前と同じように食べることが難しくても、食べる楽しみの形は一つではありません。
一口食べられたことが喜びになる方もいれば、家族と食卓を囲むことが何よりの楽しみになる方もいます。
私たちが目指したいのは、単に食事量を増やすことだけではありません。その人の生活に、少しでも楽しみや喜びが生まれることです。
食支援は、歯科だけではできない
食べることを支えるには、多くの専門職の力が必要です。
歯科医師は、口腔内の状態や噛む機能、飲み込む機能を評価し、必要な治療や支援を考えます。歯科衛生士は、口腔ケアや口腔機能の維持・改善を支えます。医師や看護師は、全身状態や病気、治療との関係を確認します。言語聴覚士は、摂食嚥下機能の評価やリハビリテーションを担います。管理栄養士は、栄養状態を評価し、その人に合った食事や栄養の取り方を考えます。
さらに、介護職やケアマネジャーは、日々の生活の中で食事を支え、ご本人の変化や希望を私たちに伝えてくれます。そして、ご家族は、その人がどんな暮らしを送り、何を大切にしてきたのかを教えてくれる大切な存在です。
それぞれの専門性を持ち寄り、情報を共有することで、一人の専門職だけでは見つけられなかった解決策が見えてくることがあります。
歯科で入れ歯を調整したことで食べやすくなり、管理栄養士が食べやすい食事の工夫を提案する。介護職が食事中の様子を伝え、医師や言語聴覚士と一緒に食事の方法を見直す。ご家族が本人の好物を教えてくれたことをきっかけに、食べる意欲を引き出す工夫が生まれる。
こうした一つひとつの積み重ねが、その人の「食べたい」を支える力になります。
そして、支援する側が一方的に方法を決めるのではなく、ご本人やご家族も含めて一緒に考えることが大切です。
誰か一人が頑張るのではなく、みんなで支える。
食支援は、まさにチームでつくり上げていくものなのです。
「みんなでつくる」からこそ、生まれる笑顔
私たち、たのしみ歯科が大切にしているのは、「たべることは生きること」という考え方です。
食べることを支えることは、その人の生活を支えること。そして、その人らしく生きることを支えることだと考えています。
だからこそ、私たちは診療室や施設の中だけで完結する歯科医療ではなく、患者さんが暮らす場所へ出向き、その人の生活を知り、周囲の方々と一緒に考えることを大切にしています。
ご自宅で過ごす方も、介護施設で暮らす方も、病院で療養されている方も、それぞれに大切にしてきた生活があります。
病気になったから。年齢を重ねたから。寝たきりになったから。
そのような理由だけで、生活の中から楽しみがなくなってしまうのは、寂しいことだと思います。
もちろん、以前と同じ生活を取り戻すことが難しい場合もあります。それでも、今の状態だからこそできること、新しく見つけられる楽しみがあるかもしれません。
ご本人の「たべたい」という想い。
ご家族の「たべさせたい」という願い。
医療・介護の専門職の「支えたい」という気持ち。
それぞれの想いが出会い、対話を重ね、力を合わせることで、その人に合った支援が生まれます。
そして、その先にあるのは、食べられたという喜びだけではないはずです。
食事の時間に見せてくれた笑顔。ご家族のほっとした表情。介護職の「今日はいつもより食べてくれました」という言葉。チームで小さな変化を喜び合える瞬間。
そうした一つひとつが、私たちにとって大切な成果です。
食支援に、いつでも通用する一つの正解があるわけではありません。状態も、希望も、生活も、一人ひとり違います。だからこそ、私たちはその人を知り、周囲の人とつながり、考え続ける必要があります。
「ごはんがたのしみ」な毎日を、あなたと。
「たべたい」と「たべさせたい」。
その二つの想いをつなぐことは、簡単ではないかもしれません。
不安になることも、迷うことも、思うようにいかないこともあるでしょう。
それでも、一緒に考えてくれる人がいる。一緒に悩み、できることを探してくれる仲間がいる。そのこと自体が、ご本人やご家族にとって大きな支えになるのではないでしょうか。
私たちは、食べることを通して、その人の生活を支えたいと考えています。
たとえ病気があっても、寝たきりであっても、その人らしい「たのしみ」を生活の中につくっていく。
そのために、歯科だけでなく、医療・介護・福祉に関わる多くの方々とつながり、ご本人やご家族と一緒に考え、みんなで支えていきたいと思っています。
一人では難しいことも、みんなでならできることがある。
小さな一口から始まる喜びも、食卓を囲む時間から生まれる笑顔も、誰かの「食べたい」という願いを受け止めることから始まるのかもしれません。
「たべる」を支えることは、その人の人生を支えること。
そして、その先にある笑顔を、みんなでつくっていくこと。
「ごはんがたのしみ」な毎日を、あなたと。
たのしみ歯科は、これからも地域の皆さんと一緒に、一人ひとりの生活の中にある「たのしみ」を支えていきます。
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「ごはんがたのしみ」な毎日を、あなたと。
たのしみ歯科では、ご自宅・施設への訪問歯科診療に対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。
「食べるを支える仲間、募集中。」
歯科医師・歯科衛生士の採用も行っています。
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訪問診療 080-4470-6052
外来診療 03-6904-3650