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「食べること」が難しくなったとき

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2026年3月09日

「食べること」が難しくなったとき

― ALSの患者さんの担当者会議から考える ―

先日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんの担当者会議に参加しました。

患者さんはKさん、68歳。数年前にALSと診断され、現在はご自宅で療養生活を続けておられます。

ALSは、筋肉を動かす神経が徐々に弱っていく病気です。手足の力が入りにくくなるだけでなく、進行すると「話す」「飲み込む」といった動きも難しくなっていきます。

Kさんも数年前は普通に食事ができていました。しかしここ最近、食事の様子が少しずつ変わってきたそうです。

「最近、食べるのが怖いんです」

担当者会議の中で、ご本人がそう話されました。

以前は好きだった食事も、今は思うように飲み込めない。

むせることが増え、食事の途中で咳き込んでしまう。

「もしこのまま飲み込めなくなったらどうしよう」

そんな不安が強くなっているようでした。

食べることは、私たちにとってとても自然な行為です。

しかし実際には、口・舌・喉・呼吸など、多くの働きがうまく連携して初めて成り立っています。

ALSでは、こうした筋肉の動きが徐々に弱くなっていくため、「食べる力(摂食嚥下機能)」にも影響が出てきます。

食事がうまく飲み込めない状態を「嚥下障害」と呼びます。

嚥下障害が進むと、食事量が減って栄養状態が悪くなったり、食べ物が気管に入ってしまう「誤嚥」を起こしたりすることがあります。

誤嚥が続くと、誤嚥性肺炎の原因にもなります。

だからといって、「食べること」をすぐに諦めなければならないわけではありません。

今回の担当者会議では、医師、看護師、訪問看護師、ケアマネジャー、リハビリ職、管理栄養士、そして歯科など、多くの職種が集まりました。

それぞれの立場から、Kさんの「これからの食事」について話し合いました。

ALSの患者さんの食事を考えるとき、よく話題に上がるのが「胃ろう」という選択です。

胃ろうとは、お腹に小さな穴を作り、そこから直接胃に栄養を入れる方法です。

この話が出ると、「もう口から食べられなくなるのでは」と不安に思われる方も少なくありません。

しかし実際には、胃ろうを作ったからといって、必ずしも口から食べられなくなるわけではありません。

ALSでは、舌や喉の筋肉が少しずつ弱くなっていきます。

Kさんも、最近は食べ物を口の中でうまくまとめることが難しくなってきているようでした。

舌の力が弱くなると、食べ物を口の中で一つにまとめることが難しくなります。

さらに、その食べ物を喉の方へ送り込む動きも弱くなってしまいます。

この状態では、食事の量を十分に取ることが難しくなり、栄養が不足してしまうことがあります。

そこで検討されるのが胃ろうです。

在宅医の先生からは、もう一つ大切な視点が話されました。

それは「薬を飲むルートを確保する」ということです。

ALSの患者さんは、さまざまな薬を使いながら生活しています。

しかし飲み込みが難しくなると、薬を飲むこと自体が大きな負担になってしまいます。

もし胃ろうがあれば、薬を確実に体に届けることができます。

これは在宅療養を続ける上で、とても大きな意味を持ちます。

さらに、胃ろうによって栄養が安定して確保できれば、「口から食べること」を無理に栄養摂取の手段にしなくてよくなります。

つまり、

「食事は栄養のために頑張って食べるもの」ではなく

「楽しみの時間」として残すことができるのです。

好きな味を少し味わう。

家族と一緒に食卓を囲む。

季節の食べ物を楽しむ。

そうした時間を大切にしながら、栄養は胃ろうからしっかり補う。

このような形を選ばれる方も多くいらっしゃいます。

一方で、胃ろうにも現実的な課題があります。

胃ろうから栄養を入れるには、一定の時間がかかります。

準備や片付けも必要です。

そのため、「誰がそれを行うのか」という問題も出てきます。

ご家族が行うのか、訪問看護師が関わるのか、

在宅医療チームの中で役割を話し合う必要があります。

また、栄養摂取の方法としては胃ろう以外にも方法があります。

例えば、高カロリーの栄養ゼリーなどを活用する方法です。

少量でもエネルギーを取ることができ、飲み込みやすい形状のものも多くあります。

こうした食品をうまく取り入れることで、口からの栄養摂取を補うことができる場合もあります。

大切なのは、「胃ろうか、口からの食事か」という二者択一ではなく、

その方の状態や希望に合わせていくつもの方法を組み合わせていくことです。

担当者会議では、ケアマネジャーさんがKさんがこれからも安心して生活できるよう、ここにいるみんな、チームで支えていきましょう言ってくれてとてもうれしい気持ちになりました。

「どうすれば、Kさんがこれからも“食べる楽しみ”を感じられるか」

そのことを、みんなで考え続けていきたいと思います。

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