2026年3月17日

― 入れ歯と口の機能から考える“食べる力” ―
高齢になると、「最近食事量が減った」「食べにくくなった」といった声をよく耳にします。
そしてその理由として、「歳だから仕方ないですね」と言われてしまうことも少なくありません。
しかし、本当にそれは年齢のせいだけなのでしょうか。
実は、適切な治療やリハビリによって、再び食べられるようになるケースも少なくありません。
今回は、当院に通われている Oさん のお話をご紹介します。
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一人暮らしから施設入所へ
Oさんはもともとお一人で生活されていました。
ところが、誤嚥性肺炎を繰り返すようになり、だんだんと一人で暮らすことが難しくなりました。
ご家族や医療者と相談の結果、施設へ入所することになりました。
施設での生活が始まると、体調は徐々に安定し、以前よりも元気に過ごせるようになりました。
デイサービスのレクリエーションや季節のイベントもあり、毎月の行事をとても楽しみにされていました。
ところが、Oさんには一つ大きな悩みがありました。
それは 食事 でした。
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イベントでも一人だけ違う食事
退院する際、病院の先生から
「誤嚥のリスクがあるのでペースト食で」
と指示が出ていました。
そのため施設では、ずっとペースト状の食事が提供されていました。
イベントの日には、周りの方が
お寿司やお弁当、季節の料理などを楽しんでいます。
しかしOさんの前に並ぶのは、いつもペースト状の食事。
「みんなと同じものを食べたい」
そう思いながらも、仕方がないとあきらめていたそうです。
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ある日、思い切って在宅医の先生に
「普通の食事は食べられないのでしょうか」
と相談しました。
そこで嚥下機能の評価を行ったところ、
普通の食事を口に入れると ほとんど噛まずに丸のみしてしまう状態 でした。
このまま普通食にすると、
窒息の危険があるため許可は出ませんでした。
しかしそのとき、在宅医の先生がもう一つ気づいたことがありました。
「入れ歯が合っていないようですね。
カポカポしているので、歯医者さんで見てもらいましょう」
そこでOさんは当院を受診されました。
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診察してみると、在宅医の先生の言う通り
入れ歯が大きくずれていました。
噛もうとすると入れ歯が動いてしまい、
しっかり噛むことができない状態だったのです。
これでは食べ物を噛み砕くことができません。
その結果、
噛まずに飲み込む癖がついてしまっていたのです。
まずは入れ歯を調整し、
しっかり噛める状態を作りました。
そして次に行ったのが
「噛んで食べる練習」 です。
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【噛む練習をすると食べられるように】
入れ歯が合うようになると、
少しずつ噛むことができるようになりました。
最初はやわらかい食材から始め、
ゆっくり噛む練習をしていきました。
すると、
・噛む回数が増える
・飲み込む前に食べ物をまとめられる
・食事のスピードが安定する
といった変化が見られるようになりました。
そして徐々に食べられるものが増えていきました。
Oさんはとても嬉しそうに
「久しぶりに“食べている感じ”がする」
と話してくださいました。
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食べられない原因は「歳」だけではない
高齢になると、
「食べられなくなるのは歳のせい」と思われがちです。
しかし実際には、
・入れ歯が合っていない
・歯が少ない
・噛む力が弱くなっている
・舌や口の動きが低下している
など、さまざまな原因があります。
今回のOさんのように、
入れ歯の調整や歯科治療によって
再び食べられるようになるケース もあります。
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歯があるのに食べにくい人は要注意
もう一つ大切なポイントがあります。
それは
歯があるのに食べにくくなっている人 です。
この場合、
・舌の動き
・口の筋力
・飲み込みの力
といった 口腔機能(こうくうきのう) が低下している可能性があります。
最近では
• むせやすくなった
• 食事に時間がかかる
• 口の中に食べ物が残る
• 食事量が減った
といった症状は、
口腔機能低下症 と呼ばれる状態として注目されています。
この段階で気づき、
口のリハビリや食べ方の調整を行うことで、
食べる力を維持することができます。
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食べられるかは「年齢」ではなく「機能」
私たちはよく
「もう高齢だから仕方ない」
という言葉を耳にします。
しかし、食べられるかどうかは
年齢だけで決まるものではありません。
大切なのは
口の機能が保たれているかどうか
です。
歯がしっかり噛める状態か。
舌や口がしっかり動くか。
安全に飲み込めるか。
これらが整えば、
高齢になっても食べる楽しみを続けることができます。
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食べる力を支えるのも歯科の役割
歯科というと
「虫歯を治すところ」
というイメージが強いかもしれません。
しかし実際には、
・入れ歯の調整
・噛む力の回復
・口の機能の評価
・食べ方のサポート
など、
「食べる力」を支える役割 も大きいのです。
もし
• 食事が食べにくくなってきた
• 入れ歯が合っていない
• 食事形態がずっと変わっていない
• むせが増えてきた
といったことがあれば、
一度歯科に相談してみてください。
もしかすると、
「もう食べられない」と思っていた食事が
再び楽しめるようになるかもしれません。
食べることは、
栄養だけでなく 生きる楽しみ にもつながります。
これからも、
お口の状態と食べる力を大切にしながら、
皆さんの生活を支えていきたいと思います。