2026年3月27日

最近、外来で「飲み込み」に関するご相談が少しずつ増えています。食べることは毎日の楽しみのひとつですが、飲み込みの力(嚥下機能)は体調や入院をきっかけに、気づかないうちに低下してしまうことがあります。
今回は、Iさんのお話をご紹介します。
Iさんは新型コロナウイルス感染症で入院されました。入院中に食事が誤って気管に入り込む「誤嚥」がみられたため、食事はペースト状のやわらかいものに変更され、そのまま退院となりました。
退院後、Iさんは「もう大丈夫だろう」と思い、普通のご飯を食べるようになりました。けれども、食事のたびにむせてしまう状態が続いていました。それを心配されたケアマネジャーさんの勧めで、Iさんは当院を受診されました。
詳しく飲み込みの検査を行ったところ、舌の力が弱くなっており、食べ物をうまく喉へ送り込めていないことが分かりました。そのため、飲み込んだ後も喉の奥(喉頭蓋のあたり)に食べ物が残りやすく、それがむせや誤嚥につながっていました。また、水分もそのままではむせやすく、とろみをつける必要がある状態でした。
検査によって、Iさんに合った「ちょうどよいとろみ」の強さを見つけることができました。そして、舌の動きをよくするためのリハビリも始めました。毎日少しずつ続けることで、舌の力は徐々に回復し、むせる回数も減っていきました。
現在Iさんは、たのしみ歯科に隣接する板橋区医師会病院に通院しながら、その帰りに当院にも立ち寄ってくださっています。待合室でスタッフとお話しされる時間も楽しみのひとつになっているようで、穏やかな表情がとても印象的です。
「食べられているから大丈夫」と思っていても、実はうまく飲み込めていないことがあります。「むせることが増えた」「飲み込みにくい」「食後に声がかすれる」といった変化は、体からの大切なサインです。
少しの工夫やリハビリで、安全に食べる力を取り戻せることも多くあります。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。これからも、皆さんが安心して「食べる楽しみ」を続けていけるよう、お手伝いしていきたいと思います。