2026年2月03日
「最近むせやすくなった」
「食事に時間がかかるようになった」
「飲み込みにくさを感じる」
「食べたいのに食べられない」
こうした症状は、年齢のせいだけではなく、摂食嚥下(せっしょくえんげ)機能の低下が関係している可能性があります。食べる・飲み込むという行為は、実はとても複雑で繊細な体の働きです。この機能が低下すると、栄養状態が悪くなるだけでなく、誤嚥性肺炎や体力低下、生活の質の低下にもつながります。
そこで重要になるのが、摂食嚥下リハビリテーション外来です。今回は、この専門外来がどのような場所で、何を行うのかを、患者さん向けにわかりやすくご説明します。
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■ 摂食嚥下とは何か?
「摂食」とは食べ物を口に取り込むこと、「嚥下」とは飲み込んで胃へ送ることです。私たちは普段、無意識に行っていますが、この動きには次のような段階があります。
1.食べ物を認識する
2.口に運ぶ
3.噛んでまとめる
4.喉へ送る
5.気管に入らないようにしながら食道へ送る
この一連の流れには、歯・舌・頬・喉・神経・筋肉などが連携して働いています。どこか一つでも機能が落ちると、「むせる」「飲み込みにくい」「口の中に残る」といった症状が出てきます。
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■ こんな症状は要注意
次のような様子がある場合は、摂食嚥下機能が低下している可能性があります。
・食事中によくむせる
・水やお茶で咳き込む
・飲み込んだ後に声がガラガラになる
・食事に30分以上かかる
・口の中に食べ物が残る
・食後に疲れてしまう
・体重が減ってきた
・肺炎を繰り返している
・食べ物の好みが極端に変わった(柔らかい物ばかり)
「まだ食べられているから大丈夫」と思われがちですが、軽いサインの段階での評価と対応がとても重要です。
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■ 摂食嚥下リハビリテーション外来とは?
摂食嚥下リハビリテーション外来は、
“安全に、できるだけ口から食べ続ける”ための専門外来です。
単に飲み込みの検査をするだけでなく、
・今の飲み込み機能の評価
・原因の分析
・食事形態の調整
・口腔機能の改善訓練
・姿勢や食べ方の指導
・ご家族や介護者へのアドバイス
までを総合的に行います。
「もう食べられない」と諦める前に、食べる力を引き出す支援を行う場所と考えてください。
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■ 外来で行う主な検査
◎ 問診・診察
まずは症状や困りごと、食事内容、既往歴、生活環境などを詳しくお聞きします。お薬の影響や全身状態も重要な情報です。
◎ 口腔機能のチェック
舌の動き、唇の力、頬の動き、唾液の状態、歯や入れ歯の状態などを確認します。口の働きは飲み込みに直結します。
◎ 嚥下スクリーニング検査
簡単な飲水テストなどで、安全に飲めるかどうかを評価します。
◎ 嚥下内視鏡検査(VE)
細いカメラを鼻から入れて、実際に飲み込む様子を直接観察します。
食べ物がどのように通っているか、気管に入りそうになっていないかを確認できる非常に有用な検査です。外来でも実施可能なことが多く、体への負担も比較的少ない検査です。
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■ リハビリテーションの内容
評価結果に基づいて、一人ひとりに合わせたリハビリを行います。
◎ 口腔機能トレーニング
・舌の体操
・唇や頬の運動
・発声練習
・飲み込み体操
これらにより、飲み込むための筋力と協調運動を高めます。
◎ 食事形態の調整
硬さ・まとまり・水分量を調整し、安全で食べやすい食事を提案します。必要に応じてとろみ調整なども行います。
◎ 姿勢・食べ方の指導
姿勢や顎の角度、スプーンの入れ方などで、安全性は大きく変わります。ちょっとした工夫でむせが減ることもあります。
◎ 補綴(ほてつ)治療
合わない入れ歯や歯の欠損は、噛む・まとめる機能を低下させます。義歯調整や作製も重要な治療の一部です。
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■ 対象となる方
摂食嚥下リハビリ外来は、次のような方が対象です。
・高齢で飲み込みが不安な方
・脳梗塞や神経疾患の後遺症がある方
・誤嚥性肺炎を繰り返している方
・パーキンソン病など進行性疾患の方
・がん治療後の方
・長期入院後に食事が難しくなった方
・在宅療養中で食事に不安がある方
年齢に関係なく、「食べにくさ」があれば相談対象です。
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■ 早めの受診が大切な理由
嚥下機能は、使わないと低下していきます。
逆に言えば、適切な訓練と調整で改善できる可能性もあるということです。
重症化してからでは、できることが限られてしまいます。軽いむせや違和感の段階での介入が、将来の「食べられる力」を守ります。
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■ 「口から食べる」を支えるということ
口から食べることは、単なる栄養摂取ではありません。
・楽しみ
・生きがい
・家族との時間
・季節を感じること
・その人らしい生活
すべてにつながっています。
摂食嚥下リハビリテーション外来は、
命を守る医療であると同時に、生活を守る医療でもあります。
「最近ちょっと気になる」
「このままで大丈夫かな」
そう感じた時が、相談のタイミングです。
どうぞ一人で悩まず、専門外来にご相談ください。
“食べる楽しみ”を、できるだけ長く一緒に支えていきましょう。