2026年6月22日

~地域で「食べる楽しみ」を支えるために~
こんにちは。たのしみ歯科院長の齋藤です。
先日、日本老年歯科医学会にて、当院の取り組みについて発表する機会をいただきました。
発表タイトルは、
「地域における食支援と多職種連携の取り組み」
というもので、私たちが日頃から取り組んでいる「最期まで口から食べることを支える地域づくり」についてお話しさせていただきました。
今回は、その内容を患者さんやご家族の皆さまにも分かりやすくご紹介したいと思います。
私たちが大切にしていること
たのしみ歯科には、
「ごはんがたのしみな毎日を、あなたと。」
という理念があります。
歯科医院というと、虫歯や入れ歯の治療を行う場所というイメージがあるかもしれません。
もちろんそれも大切な役割です。
しかし私たちは、それだけではなく、
「その方が何を食べたいのか」
「誰と食事をしたいのか」
「どのような生活を送りたいのか」
ということを大切にしながら診療を行っています。
食べることは栄養を摂るためだけではありません。
好きなものを味わうこと。
家族と食卓を囲むこと。
季節の行事を楽しむこと。
食事には人生を豊かにする大切な意味があります。
だからこそ私たちは、「歯を治す」だけではなく、「食べる楽しみを支える」ことを目標にしています。
【病院から自宅へ、切れ目のない支援を】
今回の発表では、板橋区医師会病院との連携についてもご紹介しました。
当院は病院のすぐ近くにあり、入院中の患者さんへの歯科診療にも関わらせていただいています。
入院中は肺炎や脳卒中、加齢による体力低下などによって、「食べる力」が弱くなっている方が少なくありません。
そのような患者さんに対して、
・お口の状態の確認
・入れ歯の調整
・口腔ケア
・摂食嚥下評価
・嚥下内視鏡検査
などを行っています。
そして、その結果を医師や看護師、管理栄養士、リハビリスタッフなどと共有しながら、患者さんにとって最適な食事方法を一緒に考えています。
開院後の約3か月間だけでも20名ほどの入院患者さんに病棟歯科診療を行いました。
その中で摂食嚥下評価を行った患者さんでは、多職種で情報を共有しながら支援を行うことで、全員が食事形態を改善することができました。
もちろん「食形態が上がる」ことだけが目的ではありません。
大切なのは、その方が安全に、そして楽しみながら食事ができることです。
【退院後も続く食支援】
私たちが特に大切にしているのは、退院後の生活です。
病院で食べられるようになっても、自宅や施設に戻ったあとに再び食事が難しくなってしまうことがあります。
そこで当院では、退院後も訪問歯科診療を通じて継続的に関わっています。
ご自宅で実際に食事をしている様子を確認しながら、
「この食事は食べやすいだろうか」
「むせは増えていないだろうか」
「ご家族の負担は大きくないだろうか」
といった視点で支援を続けています。
病院と自宅では環境が大きく異なります。
だからこそ、その人の生活に合わせた支援が必要になります。
「どこで、誰と、何を食べたいか」
今回の発表で特にお伝えしたかったのは、
「生活を見据えた食支援の大切さ」
です。
医療の現場では、どうしても病気や機能に目が向きがちです。
しかし患者さんにとって大切なのは、それだけではありません。
「自宅で家族とご飯を食べたい」
「大好きなお寿司をもう一度食べたい」
「お正月にみんなと同じものを食べたい」
そんな思いを持っている方がたくさんいます。
私たちは入院中から、
「どこで」
「誰と」
「何を食べたいのか」
を多職種で共有するようにしています。
すると退院後の支援方針が明確になり、ご本人も安心して在宅生活へ移行することができます。
食べることは生活そのものだからです。
【地域全体で支えることが大切】
食支援は歯科だけで完結するものではありません。
医師、看護師、管理栄養士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、介護職など、多くの専門職が関わっています。
そのため私たちは、地域の多職種が集まる勉強会にも力を入れています。
板橋区歯科医師会では3か月に一度、在宅医療勉強会を開催しています。
毎回20〜30名ほどの専門職が参加し、その約半数は介護職の方々です。
実際の症例をもとに、
「どうしたら安全に食べられるか」
「どうしたら食事を楽しめるか」
をみんなで考えています。
職種の垣根を越えて意見交換ができる貴重な機会となっています。
【学生教育にも力を入れています】
未来の地域医療を支える人材育成も、私たちの大切な役割です。
当院では歯学部学生や歯科衛生士学校の学生実習を受け入れています。
訪問歯科診療や食支援の現場を経験した学生さんからは、
「卒業後は訪問歯科に関わりたい」
「地域で活躍できる歯科医療従事者になりたい」
という声をいただくこともあります。
食支援に関わる仲間を増やしていくことは、これからの地域医療にとってとても重要だと考えています。
【「最期まで口から食べる」を支えるために】
高齢化が進む中で、「食べること」の支援はますます重要になっています。
病気や障害があっても、その人らしく暮らし続けるためには、食事の支援が欠かせません。
そして、その支援は病院だけでなく、地域全体で行う必要があります。
今回の学会発表を通じて改めて感じたのは、多職種が連携し、それぞれの専門性を持ち寄ることで、患者さんの可能性を広げることができるということでした。
私たちはこれからも、
「ごはんが楽しみな毎日を、あなたと。」
という理念のもと、地域の皆さまの食べる喜びを支えていきたいと思います。
食事や飲み込み、お口のことで気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
これからもたのしみ歯科は、地域の皆さまとともに「食べる楽しみ」を守り続けてまいります。