2025年11月21日

嚥下リハビリを進めていく中で、私たちがよく患者さんにお聞きする質問があります。
それは――
「食べられるようになったら、まず何が食べたいですか?」
というもの。
これまで多くの方に聞いてきましたが、答えとして圧倒的に多いのが 「マグロ」 です。中トロや赤身など、口に入れた瞬間にほどけるやわらかな食感と、噛まずに飲み込みやすい適度なまとまりがあり、嚥下機能が回復したときに選ばれやすい食材です。
次に多いのが 「うなぎ」。これも根強い人気があります。ふっくら柔らかく、タレの香ばしさが「また食べたい」という気持ちを強く刺激します。どちらも、単に“好きな食べ物”というだけでなく、嚥下しやすい特徴を自然に備えているところが、選ばれやすい理由なのかもしれません。
そして第3位は、少しほっとする答えが返ってきます。
それは 「奥さまの手料理」。
昔から作ってもらっている味、誕生日に食べていたメニュー、家族団らんの思い出。食べることは、単に栄養をとるだけではなく、「その人の人生と、大切な人との記憶に触れる時間」でもあるのだと感じます。
嚥下の改善は、小さな一歩の積み重ねですが、
「またあれが食べたい」という気持ちは、リハビリを支える大きな力になります。
私たちも、その願いをかなえるお手伝いができるよう、日々の診療を続けています。