口から食べたい。そのためにできること|訪問歯科診療に対応|たのしみ歯科|板橋区高島平の歯医者・小児歯科・口腔外科

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口から食べたい。そのためにできること

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2026年10月01日

口から食べたい。そのためにできること

「できれば、口から食べたい」

訪問歯科診療をしていると、患者さんやご家族から、そんな言葉を聞くことがあります。

病気をした。
肺炎になった。
入院して体力が落ちた。
飲み込みが悪くなった。

さまざまな理由から、それまで口から食べていた方が、食事を中止したり、食べられるものが限られたりすることがあります。

「もう口から食べるのは難しいですね」

そう説明されることもあるでしょう。

もちろん、食べることには誤嚥や窒息などのリスクがあります。安全を考えることは、とても大切です。

一方で、「食べられない」という結果だけを見るのではなく、「どうしたら、少しでも口から食べられるのか」を考えることも大切ではないでしょうか。

今回は、「口から食べたい」という希望をかなえるために、どのようなことができるのかを考えてみたいと思います。

「口から食べる」ためには、たくさんの力が必要です

私たちは、普段あまり意識せずに食事をしています。

料理を見て、食べ物だと認識する。

手を伸ばして口へ運ぶ。

唇を使って取り込む。

歯で噛む。

舌を動かして食べ物をまとめる。

唾液と混ぜる。

のどへ送り込む。

呼吸とタイミングを合わせて飲み込む。

そして食道から胃へ運ぶ。

実は、「口から食べる」という一つの行為には、口だけでなく、脳、神経、筋肉、呼吸、姿勢、全身の体力など、多くの機能が関係しています。

そのため、口から食べられなくなったときには、「飲み込みだけが悪い」と考えず、どこに問題があるのかを一つずつ確認することが大切です。

【まず確認したい「なぜ食べられないのか」】

口から食べられない理由は、人によって違います。

たとえば、

・脳卒中の後遺症で飲み込みにくい
・パーキンソン病などの神経疾患がある
・肺炎や入院をきっかけに体力が落ちた
・舌や口の筋力が低下している
・歯が少なくなった
・入れ歯が合っていない
・口の中に痛みがある
・唾液が少なく、口の中が乾燥している
・食べる姿勢が安定しない
・食べるとすぐ疲れてしまう
・認知機能の低下などにより、食事がうまく進まない

など、さまざまです。

だからこそ、「食べられないから食事を柔らかくする」「むせるから食べない」という一つの対応だけではなく、食べられない原因を探すことから始めます。

① 口の中を整える

口から食べるために、まず大切なのが「口の環境」です。

歯が痛ければ、しっかり噛むことができません。

歯が少なければ、食べ物を細かくすることが難しくなります。

入れ歯が合っていなければ、噛みにくいだけでなく、食事そのものが苦痛になることがあります。

また、口の中が汚れていると、誤嚥した際に肺炎につながるリスクにも関係します。

そのため、むし歯や歯周病の治療、入れ歯の調整、口腔ケアなど、「食べるための口を整える」ことが大切です。

「飲み込みの問題だから歯科は関係ない」と思われるかもしれません。

しかし、食べ物を噛み、唾液と混ぜ、飲み込みやすい状態にするところまでを考えると、歯科は「口から食べる」ことを支える重要な役割を担っています。

② 舌を元気にする

食べるとき、歯と同じくらい大切なのが舌です。

舌は、食べ物を口の中で動かしたり、歯の上に運んだり、唾液と混ぜたり、飲み込むために食べ物をまとめたりしています。

舌の力が弱くなると、

「食べ物をうまくまとめられない」

「口の中に食べ物が残る」

「飲み込むのに時間がかかる」

といった問題が起こることがあります。

舌を動かす練習や口腔体操などによって、口の機能を維持・改善することを目指します。

ただし、どのような訓練が必要かは一人ひとり異なります。

「たくさん練習すればいい」というものではなく、その人の状態に合わせて行うことが大切です。

③ 姿勢を整える

意外と見落とされやすいのが「姿勢」です。

食事をするとき、身体がぐらぐらしていると、口や舌、のどをうまく動かしにくくなることがあります。

椅子に座って食べる場合は、身体を安定させ、足を床につけるなど、食べやすい姿勢を整えます。

ベッド上で食べる場合にも、その人の身体の状態に合わせて姿勢を調整します。

頭や首の位置も重要です。

ただし、「この姿勢なら誰でも安全」というものではありません。

身体の状態や嚥下機能によって適切な姿勢は変わるため、必要に応じて専門職に評価してもらうことが大切です。

④ 食べ物の形を工夫する

「口から食べる」といっても、最初から普通の食事を食べる必要はありません。

その人の状態に合わせて、

・ペースト状
・ムース状
・ゼリー状
・やわらかい食事
・刻み食
・通常食

など、食べやすい形を検討します。

ただし、ここでも注意が必要です。

「刻めば安全」
「柔らかくすれば安全」
「とろみをつければ安全」

とは限りません。

たとえば、細かく刻んだ食べ物は、口の中でばらばらになって、かえってまとめにくい場合があります。

大切なのは、「その人が食べやすいか」という視点です。

食形態を変更するときには、歯科医師や言語聴覚士、管理栄養士などの専門職と相談しながら進めると安心です。

⑤ 水分の摂り方を考える

水やお茶などのサラサラした液体は、食べ物よりも速くのどへ流れていきます。

そのため、飲み込むタイミングが合わない方では、水分でむせることがあります。

必要に応じて、とろみをつけるなどの工夫を行うことがあります。

ただし、とろみが強すぎると飲みにくくなったり、水分摂取量が減ったりすることもあります。

水分は脱水を防ぐためにも重要です。

「むせるから水を飲ませない」のではなく、どうしたら安全に必要な水分を摂れるのかを考えることが大切です。

⑥ 食べるための体力をつける

食べることは、意外と体力を使います。

食事の途中で疲れてしまう方は、十分な量を食べられないことがあります。

特に病気や入院を経験した高齢者では、筋肉量が減少していることがあります。

食べられない
↓
栄養が不足する
↓
筋肉が減る
↓
体力が落ちる
↓
さらに食べられなくなる

このような悪循環に陥ることがあります。

だからこそ、「食べる訓練」だけではなく、必要な栄養をどう確保するかも重要です。

管理栄養士などと連携し、少量でもエネルギーやたんぱく質を確保できる食事を考えることもあります。

⑦ 実際の食事を見てもらう

摂食嚥下機能を評価するときには、口の中を見るだけでは十分ではありません。

実際に食事をしているところを見ることが、とても大切です。

どんな姿勢で食べているのか。

一口の量はどのくらいか。

何回噛んでいるのか。

どこでむせるのか。

食後に声が変化していないか。

どのくらいの時間で食べ終わるのか。

食事の後に疲れていないか。

こうした情報から、その人の「食べる」を具体的に考えていきます。

⑧ 必要なら嚥下機能を詳しく調べる

「むせるけれど、どこが問題なのかわからない」

「安全に食べられるものを知りたい」

という場合には、嚥下機能の検査を行うことがあります。

その一つが嚥下内視鏡検査(VE)です。

鼻から細い内視鏡を入れ、のどの動きや唾液、食べ物の状態などを確認します。

実際に食べ物や飲み物を摂ってもらいながら評価することで、

「何が食べやすいのか」
「どこで問題が起こっているのか」
「どのような姿勢や食べ方がよいのか」

を考える材料になります。

検査の目的は、「食べられないことを確認する」ことではありません。

「どうしたら、より安全に食べられるか」を探すための検査でもあります。

「安全」と「食べたい」は、どちらも大切

口から食べることを考えるとき、必ず出てくるのが「誤嚥のリスク」です。

誤嚥や窒息の危険を完全になくすことはできません。

だからこそ、安全性を評価しながら食事方法を考える必要があります。

一方で、「誤嚥の可能性があるから、何も食べない」という結論だけでは、その人の希望や生活を十分に支えられない場合があります。

たとえば、

「大好きだったプリンを一口食べたい」

「家族と一緒に食卓を囲みたい」

「最期まで口から味わいたい」

という希望があるかもしれません。

医療者にとっての「安全」と、本人にとっての「食べたい」は、どちらか一方だけを選ぶものではありません。

その人の状態を評価し、できるだけ安全な方法を探しながら、本人にとって意味のある食べ方を一緒に考える。

それが大切なのだと思います。

「もう食べられない」と言われたときに

もし、ご家族が

「もう口から食べるのは難しいと言われました」

と説明を受けたとしても、一度立ち止まって考えてみてください。

なぜ食べられないのでしょうか。

口の中に問題はありませんか?

入れ歯は合っていますか?

舌は動いていますか?

姿勢は安定していますか?

食事の形は合っていますか?

体力や栄養状態はどうでしょうか?

飲み込みの状態は評価されていますか?

そして、本人は何を食べたいと思っているのでしょうか。

すべての方が再び普通に食べられるようになるわけではありません。

それでも、「もう無理」と決める前に、その人にできることが残っていないかを考えることには意味があります。

一口だけでもいい。

好きなものを味わうだけでもいい。

家族と一緒に食卓を囲むだけでもいい。

「食べる」には、栄養だけではない意味があります。

「食べる」を支えるのは、一人ではありません

口から食べることを支えるには、多職種の力が必要です。

医師は全身状態や病気を診ます。

歯科医師は歯や入れ歯、口腔機能、摂食嚥下機能を診ます。

歯科衛生士は口腔ケアや口腔機能の維持を支えます。

言語聴覚士は、摂食嚥下機能やコミュニケーションの面から支援します。

管理栄養士は、必要な栄養をどう確保するかを考えます。

看護師や介護職は、日々の生活の中で食事を支えます。

そして何より大切なのが、本人とご家族の思いです。

それぞれの専門性を持ち寄って、「この人にとって、どうすることが一番よいのか」を一緒に考えていきます。

口から食べることは、「生きること」の一部

私たちが大切にしたいのは、「何をどれだけ食べられるか」だけではありません。

食べることは、栄養を摂ること。

そして同時に、

「おいしい」

「うれしい」

「家族と一緒に食べたい」

「もう一度、あれを食べたい」

という気持ちにつながっています。

だからこそ、摂食嚥下障害のある方を前にしたとき、

「食べられるか、食べられないか」

の二択だけで考えるのではなく、

「どうしたら食べられるか」

という視点を持ちたいと思っています。

口の中を整える。

入れ歯を調整する。

舌や口を動かす。

姿勢を整える。

食事の形を工夫する。

栄養を整える。

飲み込みを評価する。

多職種で相談する。

そして、本人が「食べたい」と思う気持ちを大切にする。

一つひとつは小さなことかもしれません。

でも、その積み重ねが、「もう一度食べたい」という願いにつながることがあります。

【食べることは、生きること。】

だからこそ私たちは、「食べられない」で終わらせるのではなく、

「その人にとって、どうしたら食べられるのか」

を一緒に考えていきたいと思っています。

たのしみ歯科は、歯や入れ歯を治すだけでなく、口腔ケア、摂食嚥下機能の評価、多職種との連携を通して、皆さんの「食べる」を支えます。

「口から食べたい」

その気持ちを、私たちは大切にします。

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