2026年8月18日

食べる前の準備から始める、飲み込む力を支えるリハビリテーション
「最近、食事中によくむせるようになった」
「飲み込むのに時間がかかる」
「以前より食事量が減ってきた」
年齢を重ねたり、病気や体力の低下などによって、このような変化がみられることがあります。
食べ物や飲み物を口から胃へ安全に運ぶためには、舌や唇、頬、喉など、さまざまな筋肉や感覚が協調して働く必要があります。この一連の動きを「嚥下(えんげ)」といいます。
嚥下する力が低下すると、「むせる」「咳が出る」といった症状だけでなく、食事に時間がかかったり、食べられるものが限られたり、食事量が減って低栄養につながったりすることがあります。
そこで重要になるのが、嚥下障害に対するリハビリテーションです。
今回は、その中でも食べ物を使わずに行う「基礎訓練」について、わかりやすくご紹介します。
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「基礎訓練」は、食べるための準備運動
嚥下障害のリハビリテーションには、大きく分けて、食べ物を使わずに行う「基礎訓練」と、実際に食べ物や飲み物を使って行う「摂食訓練」があります。
基礎訓練は、実際に食事をする前に、嚥下に必要な筋肉を動かしたり、口や喉に刺激を加えたりすることで、食べるための身体の準備を整えることを目的としています。
例えば、スポーツをするときに、いきなり全力で走るのではなく、ストレッチや準備運動を行うのと似ています。
ただし、嚥下障害の状態は一人ひとり異なります。
「むせるから、とにかくこの訓練をすればいい」というものではありません。病気や身体の状態、嚥下機能を評価したうえで、その方に合った訓練を選ぶことが大切です。
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まず大切なのは「口腔ケア」
嚥下のリハビリテーションというと、「舌を動かす」「飲み込む練習をする」といった運動をイメージする方も多いかもしれません。
しかし、実はその前に大切なのが口腔ケアです。
口の中に食べ物の残りかすや歯垢、舌苔などが多く残っていると、細菌が増えやすくなります。
嚥下機能が低下している方では、唾液や口の中の細菌が気管に入り込む「誤嚥」が起こることがあります。
そのため、歯磨きや舌の清掃などを行い、口の中を清潔に保つことは、誤嚥性肺炎の予防という意味でも重要です。
「食べるためのリハビリテーション」は、実は歯磨きから始まっている。
そう考えてもよいでしょう。
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食事前の「嚥下体操」
食事の前に行う準備運動として、嚥下体操があります。
首や肩、胸郭、口、舌などを動かすことで、食事に必要な身体の動きを整えていきます。
例えば、
・深呼吸をする
・首を左右にゆっくり動かす
・肩を上げたり下げたりする
・背伸びをする
・頬を膨らませたり、すぼめたりする
・舌を左右に動かす
・「パパパ」「ラララ」「カカカ」と発音する
といった運動があります。
これらは単なる体操ではありません。
呼吸、口唇、舌、頬、喉など、食べることに関わるさまざまな器官を「これから食事をしますよ」と準備させる意味があります。
特に高齢の方では、朝起きてすぐよりも、少し身体を動かしてから食事をしたほうが動きやすいことがあります。
食事前の数分間を「食べるための準備時間」と考えてみましょう。
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首や肩、胸の動きも嚥下に関係します
「飲み込むのだから、口や喉だけを鍛えればいい」
そう思われるかもしれません。
しかし、実際には首や肩、胸郭などの動きも嚥下と関係しています。
例えば、首や肩の筋肉が強く緊張していたり、身体を十分に起こせなかったりすると、食事姿勢が崩れ、口や喉の動きにも影響することがあります。
そのため、必要に応じて首や肩をゆっくり動かしたり、筋肉の緊張を和らげたり、関節の動きを広げる運動を行います。
「飲み込む力」は、口だけの問題ではありません。
身体全体を整えることも、食べるための準備になります。
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舌・唇・頬をしっかり動かす
食べ物を口に取り込み、噛み、まとめ、喉へ送り込むためには、舌や唇、頬が重要な役割を果たします。
舌の力が弱くなると、食べ物をまとめることが難しくなったり、口の中に食べ物が残りやすくなったりします。
また、唇をしっかり閉じる力が弱くなると、飲み物が口からこぼれたり、食べ物をうまく取り込めなくなったりすることがあります。
そこで、舌を左右に動かしたり、唇を閉じたり、頬を膨らませたりする運動を行います。
必要に応じて、歯科医師や歯科衛生士、言語聴覚士などが口腔周囲のマッサージを行ったり、舌に抵抗を加える運動を行ったりすることもあります。
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「吹く」ことも口や呼吸のトレーニングに
ブローイングとは、息を吹く練習です。
例えば、ストローを使って水を吹いたり、巻き笛を吹いたりする方法があります。
唇をしっかり閉じる力や呼吸の力が弱い方に対して行われることがあります。
ただし、ブローイングはすべての嚥下障害の方に必要な訓練というわけではありません。
呼吸状態や口腔機能などを確認したうえで、その方に適しているかを判断することが大切です。
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噛む力を保つ「咀嚼訓練」
食事は「飲み込む」だけではありません。
食べ物を口に入れ、噛み、唾液と混ぜ、飲み込みやすい形にまとめるという過程があります。
そのため、咀嚼する力を保つことも重要です。
状態に応じてガムなどを使用して、噛むための筋肉を使う訓練が行われることがあります。
ただし、実際の食べ物を使用する訓練は、誤嚥や窒息の危険性にも注意が必要です。
「何を使って、どの程度行うのか」は、専門職に相談しながら決めるようにしましょう。
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頭を上げる「頭部挙上訓練」
嚥下に関係する筋肉を鍛える訓練の一つに、頭部挙上訓練があります。
仰向けに寝た状態で、足元を見るように頭を持ち上げる運動です。
嚥下の際に喉頭を引き上げる働きに関係する筋肉のトレーニングとして行われます。
一方で、首に負担がかかる場合もあります。
首や肩に痛みがある方、身体を動かすことが難しい方などでは、無理に行わないことが大切です。
嚥下訓練は「たくさんやればよい」というものではありません。
その方の身体の状態に合わせて、安全に行うことが重要です。
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「飲み込む」練習もあります
嚥下反射を促すために、唾液を飲み込む「空嚥下」を行うことがあります。
「ごっくん」と飲み込む動作を意識して行うことで、嚥下に必要な動きを練習します。
また、冷たい刺激を利用して嚥下反射を促す方法などもあります。
ただし、これらは嚥下障害の状態によって適否が異なります。
特に、食べ物や水分を使った訓練は、誤嚥のリスクを伴う場合があります。
「家族が良かれと思って水を飲ませて練習させる」ということが、かえって危険になるケースもあります。
自己流で行うのではなく、専門職による評価を受けてから実施することをおすすめします。
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声を出すことも嚥下訓練の一つ
嚥下には、声を出すための器官である声帯も関係しています。
飲み込むときには、喉頭が閉じることで食べ物や飲み物が気管へ入ることを防いでいます。
声帯の動きが弱い場合には、発声を利用した訓練が行われることもあります。
例えば、力を込めて「あー」「えい」などと発声しながら、胸の前で手を押し合ったり、壁や机を押したりする「プッシング」という方法があります。
ただし、これもすべての方に適しているわけではありません。
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嚥下リハビリテーションで大切なのは「その人に合わせる」こと
ここまで、さまざまな基礎訓練をご紹介しました。
しかし、一番大切なのは、
「どの訓練をするか」よりも、「その人に合った訓練をすること」
です。
嚥下障害の原因はさまざまです。
脳卒中、パーキンソン病、認知症、加齢による筋力低下、口腔機能の低下、全身の病気など、背景によって問題となる場所も異なります。
「むせる」という同じ症状でも、原因が違えば必要な対応も変わります。
そのため、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士、看護師、管理栄養士、医師など、多職種で状態を確認しながら進めることが大切です。
必要に応じて、嚥下内視鏡検査(VE)などを行い、実際にどのように飲み込んでいるのかを確認することもあります。
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「訓練すること」がゴールではありません
嚥下リハビリテーションの目的は、筋肉を鍛えることそのものではありません。
最終的な目的は、その人が安全に、できるだけ自分らしく食べることです。
「好きだったものをもう一度食べたい」
「家族と一緒に食卓を囲みたい」
「少しでも口から食べる楽しみを残したい」
そんな思いが、リハビリテーションの大きな原動力になることがあります。
だからこそ、私たちは「飲み込めるか、飲み込めないか」だけで判断するのではなく、その方がどのように暮らしたいのか、何を食べたいのかまで考えることが大切だと考えています。
たのしみ歯科では、訪問歯科診療や摂食嚥下の診療を通じて、口腔ケアだけでなく、「食べること」そのものを支える取り組みを行っています。
食べる力が低下してきたとき、早めに相談することでできることはたくさんあります。
「最近むせるようになった」
「食事に時間がかかる」
「口の中に食べ物が残る」
「食べられる量が減ってきた」
そんな小さな変化も、大切なサインかもしれません。
食べることは、生きること。
その人にとっての「ごはんがたのしみ」な毎日を、できるだけ長く支えていく。
嚥下リハビリテーションは、そのための大切な選択肢の一つです。
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「ごはんがたのしみ」な毎日を、あなたと。
たのしみ歯科では、ご自宅・施設への訪問歯科診療に対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。
「食べるを支える仲間、募集中。」
歯科医師・歯科衛生士の採用も行っています。
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