「食べられるようになる」という治療 ― 入れ歯がつないだ親子の時間|訪問歯科診療に対応|たのしみ歯科|板橋区高島平の歯医者・小児歯科・口腔外科

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「食べられるようになる」という治療 ― 入れ歯がつないだ親子の時間

「食べられるようになる」という治療 ― 入れ歯がつないだ親子の時間|訪問歯科診療に対応|たのしみ歯科|板橋区高島平の歯医者・小児歯科・口腔外科

2026年6月30日

「食べられるようになる」という治療 ― 入れ歯がつないだ親子の時間

「もう身体も良くならないから……。」

Jさんがそう話されたのを、今でもよく覚えています。

訪問歯科診療では、お口の治療だけではなく、その人の人生に寄り添う場面に数多く出会います。今回ご紹介するのは、「食べられるようになること」が、栄養状態だけでなく、親子の関係まで変えていった一人の患者さんのお話です。

※個人が特定されないよう、一部内容を変更しています。

始まりは「褥瘡を改善できないか」という依頼

Jさんへの訪問は、在宅医からの相談がきっかけでした。

「栄養不足で褥瘡(床ずれ)がなかなか治らない。入れ歯が使えるようになれば、もっと食べられるようになり、褥瘡の改善につながるのではないか。」

そんな期待を込めた依頼でした。

褥瘡の治癒には十分な栄養が欠かせません。しかし、食べられなければ栄養は摂れません。

そのため、お口の状態を整えることは医療全体に関わる大切な治療になります。

お口の中は想像以上に厳しい状態

初めて診察したお口の中は、決して良い状態とは言えませんでした。

歯はほとんど失われ、残っているのは「残根」と呼ばれる歯の根だけ。

長い間歯磨きもできておらず、汚れが厚く付着していました。

本来であれば、新しい入れ歯を作製することが望ましい状態でした。

しかし、Jさんにはその気持ちがありませんでした。

「もう歳だから。」

「今さら治療しても身体は良くならない。」

その言葉からは、病気だけでなく、生きることそのものへのあきらめが感じられました。

医療者は「良い治療」を考えがちですが、患者さん自身が望まなければ、その治療は前へ進みません。

まず必要なのは、患者さんの思いを受け止めることでした。

「できること」から始める

相談を重ねる中で、一つだけJさんが前向きに受け入れてくださったことがありました。

昔使っていた古い入れ歯を修理することです。

もちろん、その入れ歯は長年使われておらず、お口にもほとんど合っていませんでした。

それでも「新しく作る」のではなく、「今あるものを直す」という提案なら受け入れていただけました。

訪問歯科では、このように患者さんの気持ちに合わせて治療方法を選ぶことが少なくありません。

最善を押し付けるのではなく、一緒に進める道を探すことが大切です。

調整を何度も繰り返し、なんとか使える状態になりました。

同時に口腔ケアを続け、お口の環境も少しずつ改善していきました。

食べられるものが増えてきた

最初は、お粥しか食べられませんでした。

しかし、入れ歯が使えるようになり、お口の痛みも減るにつれて変化が現れます。

「今日はパンを食べられた。」

「果物がおいしかった。」

そんな報告が少しずつ増えていきました。

食べられる量も増え、栄養状態は改善し始めます。

在宅医や訪問看護師と情報を共有しながら経過を見守る中で、褥瘡も少しずつ良くなっていきました。

もちろん、褥瘡が改善したのは歯科だけの力ではありません。

医師、看護師、介護職、栄養士、ご家族など、多くの人の支えがあってこその結果です。

それでも、「食べられるようになった」という変化が、その流れを後押ししたことは間違いありません。

本当の治療効果は、そこからでした

しかし、この治療で最も大きな変化は、褥瘡の改善ではありませんでした。

食べられるようになってから、これまで介護にあまり積極的ではなかった息子さんが変わり始めたのです。

「自分ももっと関わりたい。」

そう話してくださるようになりました。

実は、それまで親子関係はあまり良いとは言えませんでした。

必要な介護は行っていても、会話は少なく、距離があるように感じられました。

ところが、「食べる」という楽しみが戻ると、その関係が少しずつ変わっていきました。

駅前までお弁当を買いに行ってくれたり、

「パンが食べられるようになったなら」と、大好きだった杏ジャムを探しに少し遠くのお店まで足を運んでくれたり。

食べ物の話が親子の共通の話題になっていったのです。

「今日は何が食べたい?」

「このパンはどうだった?」

そんな何気ない会話が増えました。

やがて息子さんは、自分自身の人生の悩みをお父さんに相談するようになりました。

介護をする人と、介護を受ける人。

そんな関係だけではなく、親子としての時間が少しずつ戻ってきたのです。

そしてJさん自身も、

「もう少し頑張ってみようかな。」

「息子の力になってあげたいな。」

そんな前向きな表情を見せてくださるようになりました。

「食べる」は、人と人をつなぐ

歯科医療というと、虫歯を治したり、入れ歯を作ったりする仕事と思われるかもしれません。

もちろん、それも大切な役割です。

しかし訪問歯科では、その先にある生活を見ています。

食べられるようになること。

笑顔が増えること。

家族との会話が増えること。

生きる楽しみが戻ること。

これらは数値では測れませんが、私たちが日々目にする、本当に大きな治療効果です。

食事には栄養を摂るという役割があります。

それだけではありません。

誰かと同じものを食べること。

「おいしいね」と話すこと。

好きだった味を思い出すこと。

次は何を食べようかと考えること。

こうした時間そのものが、人の心を元気にし、家族をつなぎ、人生を豊かにしてくれます。

「食べる」を支えることは、「生きる」を支えること

Jさんの症例は、私たちに大なことを教えてくれました。

入れ歯を修理したことがゴールではありません。

褥瘡が改善したことだけが成果でもありません。

本当に価値があったのは、「食べる楽しみ」を取り戻したことで、親子の時間が戻り、Jさんが再び生きる希望を見いだしたことでした。

訪問歯科では、お口だけを診ているわけではありません。

その人の暮らしを見ています。

その人らしい人生を支えています。

「食べる」を支えることは、「生きる」を支えること。

これからも私たちは、一人ひとりの人生に寄り添いながら、お口から始まる小さな変化を大切に積み重ねていきたいと思います。

「ごはんがたのしみ」な毎日を、あなたと。

たのしみ歯科では、ご自宅・施設への訪問歯科診療に対応しています。

まずはお気軽にご相談ください。

「食べるを支える仲間、募集中。」

歯科医師・歯科衛生士の採用も行っています。

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